[享楽]は、
・短期的、刹那的
・ドキドキ、ワクワク、ハラハラ、ランラン
・アドレナリン的な興奮と緊張
・ドーパミン的な渇望と期待
・不足を補い、欠落を埋める激しい快感
・「ない」にフォーカス

[充実]は、
・長期的、本質的
・ぽかぽか、じんわり、ほっこり、るんるん
・セロトニン的な安定と充足
・オキシトシン的な安心と脱力
・満たされ、溢れる静かな快感
・「ある」にフォーカス

このように対比すると、
僕の伝えたいことがイメージしやすいんではないでしょうか。
　
　
この前提の上で伝えたいことは
『[享楽]に溺れると幸福度が下がるので、気をつけよう』
ということです。

誤解してほしくないのですが、
[享楽]が悪くて、[充実]は良いもの
というわけ「ではありません」。

どちらも快感であり、気持ちいいし、幸せを感じるものです。
どちらも必要不可欠な感情であり、種類が違うだけです。

ですが、[享楽]に偏りすぎると、
QOL（人生の質）が損なわれやすいので
それは知っておいて、気をつけるといいですよ
というお話です。

ちょっと、抽象的な話が続いたので、
ここからは具体的にお話していきましょう。

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よくわかる解説
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まずは、[享楽]の代表例として、
・刺激が過剰なゲームなどの娯楽
・市販のお菓子などの嗜好品
・酒やタバコなどのドラッグ
を思い浮かべてみればわかりやすいでしょう。

これらが『無性に欲しくなる時』はどんな時ですか？
　
閉塞感、モヤモヤ、生きづらさ、
ストレス、不安、不満を感じている時、
そして、体調が悪い時や、自由に動けない時などではないでしょうか。

[享楽]を感じる条件は、不足感や欠乏感といった
「ない」「足りない」「不満足」が刺激された時であり、

それが満たされた時に、強烈な快感を感じられるようになっています。

基本的に[享楽]は錯覚に近いものがあります。

「谷深ければ山高し」の理論で、
欠乏感という前フリがあるからこそ、強烈な快感を得られます。

一方で、もし満たされた状態で同じ刺激を受ければ、
あまり大きな快感（[享楽]）は得られません。

この事は、「一度手を出したら終わり」と言われているドラッグであっても同じです。

アメリカのノースカロライナ州にてサルを対象に行われた
ドーパミンに関する実験が行われました。

サルにコカインを与えて依存度を調べたところ、
・立場が強く、満たされているボスザルは依存しづらかったのに対して、
・立場が低く、孤独なサルは高確率で依存した
という結果が出たんです。

依存症が強いドラッグであっても、
欠乏感があるかどうかによって、依存度は変わるんです。

（※補足：言わずもがな、ですが「だからリア充はドラッグやっても大丈夫」などとは言っていませんよ。薬物ダメ。ゼッタイ。）

もう一つ、
もう少し身近な例で「大恋愛」を考えてみましょう。
　
人は恋愛をすると「恋は盲目」「あばたもえくぼ」状態になりますね。
つまり、目が曇り、高揚感と幸福感と興奮に満たされます。

ですが、
穏やかな高揚感にとどまる人と、
ズブズブとはまり込んで周りが見えなくなる人がいます。
その違いは何でしょうか。

心理学的には、恋愛の原動力は「欠乏感」です。

欠乏感が強ければ強いほど、
恋愛パートナーにそれを求め、
満たされた時の快感も大きくなります。

メンヘラさんの恋愛事情をイメージするとわかりやすいですね。

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『気持ちイイんだから、それで良いじゃない？』
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さて、
ここまで、ゲームやお菓子、ドラッグや大恋愛など
色々な例を出してきて、具体的なイメージが共有できたと思います。

では、これらは…一体何が問題なんでしょうか？

確かな快感があり、それは幸福の一つの形です。
最初も言った通り「[享楽]が悪いもの」というわけではありません。

『気持ちいいんだから、それでいいじゃないですか』

そう言われればそれまでです。

でも、それでも僕は
『[享楽]に溺れると幸福度が下がるので、気をつけよう』
と伝えたいんですよね。

その理由は２つあります。

（１）[享楽]では欠乏は埋まらないから終わりがない
（２）だんだん耐性がついて過激になっていく

まず、
（１）[享楽]では欠乏は埋まらないから終わりがない、について

[享楽]は欠乏感というマインドセットから生まれるため
心が満たされることがありません。

　足りなくて不安だから埋めたい
　→埋まったから幸せ（[享楽]）
　→すぐにまた不足を感じる

という繰り返しになってしまうんです。

これは、
穴の空いたバケツに水を入れているようなもので、
いつまでも、欠乏感や焦燥感に追い立てられることになります。

次に、
（２）だんだん耐性がついて過激になっていく、について

人は刺激に慣れるものです。
「耐性がつく」とはつまり、鈍くなるということ。

ビールは最初の一口目が一番美味しく、
二口目以降は美味しさが減っていきます。

初めは少ない量で満たされていたのに、
繰り返す毎に満たされるためのハードルが高くなっていく。
それが[享楽]の特徴です。

こういった理由から、
[享楽]にハマりすぎるのはおすすめできません。

ただ、何度も言うように、
[享楽]は悪者ではありません。

欠乏感や興奮も一つのエンタメであり、
楽しい人生のスパイスになりますし、
面白みや思い出に残るドラマを生み出してくれるのは、
[享楽]を感じるようなシチュエーションでしょう。

要は、大事なのはバランスだということです。

ただ、
「軸足はつねに[充実]においておく」
くらいの心積もりをしていないと、
気がつけば[享楽]に溺れることになります。

なぜなら、世の中のメディアや広告や情報は、
あなたを[享楽]に引き込み、溺れさせようと仕向けるから。

ドイツの経済史家ヴェルナー・ゾンバルトは
「恋愛と贅沢と資本主義」という本の中で、
タイトル通り、恋愛と贅沢が経済の原動力であると語っています。

そう。[享楽]の世界では、お金が豪快に動くのです（笑）

だからボーッとしていると、
[享楽]の世界に引きずり込まれるものである、
ということを心しておく必要があります。

さて、
ここまで長々と訓垂れてきましたが
…僕も定期的に、[享楽]に溺れています。

酒に溺れた数年間があり、　
昼夜逆転でゲームしまくった時期、
YouTubeにハマりまくった時期があって、

自堕落な生活の楽しさを知って、
そしてその後の虚しさを何度も体験し、

「[享楽]に溺れるとあまり良いことがないよな」と
実感を込めて感じるので、自戒も込めて記事にしました。

幸福感には[享楽]と[充実]があるという区別が頭の中にあって、
人生で何度か[享楽]に溺れた経験があれば、

自分が[享楽]の沼に片足を取られかけている時に
ふと気付けるようになっていきます。

その感覚は、
どこか日本語がおかしい迷惑メールを受け取った時に感じるような、
「これ、なんか危ない気がするぞ。」という危機感。

言語化しにくい勘です。

今まで[享楽]に溺れてきた経験は、
この勘を養うための肥やしだったと諦めましょう（笑）

過去は変えられませんから、
今後の人生を充実させるために、
これまでの経験を活かしたいものですね。

＝　追　伸　＝　

ちなみに、この記事を書きながら、
　
「幸せの種類について」などということを考えられる…
この事自体が恵まれたことだと気づきました。
　

もし今、不幸感や閉塞感に苛まれる状況にいて、
とにかく「幸せになりたい」「不幸から抜け出したい」と考えていたら、
幸せの種類なんてこと、気にしていられません。

例えば、「喉が渇いて仕方がない時」には、
何を飲むかなんて些細な違いには頓着していられないですよね。

そんな時にはお茶でもジュースでも水でも、
（極限状態にあれば、たとえ泥水でも）
飲めるものなら何でも飲もうとするでしょう。

でも余裕がある状況であればどうか？
軟水か硬水か、冷水か白湯かなど
些細な違いにこだわることが出来てしまいます。

だから、
この記事を読んで、共感できたあなたは
多分けっこう幸せで満たされた状況にいる
ということだと思います。

もしかすると納得できないかもしれませんが。

「あるもの」に意識を向ければ、
世界の見え方が少しだけ変わるかもしれません。

217【幸せなはずなのに、虚しいのはなぜ？】